お茶旅 天竜

vol.17  天竜茶のノボリを立てた 太田三世代

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天竜川流域の山間地は、古くから「天竜茶」の産地として知られてきました。その天竜川の上流、西阿多古川に並行して走る静岡県道9号沿いに『カネタ太田園』があります。「静岡で美味しいお茶を作る人は」と問えば、必ずお名前が挙がり、腕に覚えのある茶師さんでも「太田さんには敵わない」と口をそろえておっしゃるカネタ太田園さん。まさに天竜に銘茶園あり。お茶づくりの名人とそのご家族のお話を伺いました。

 

天竜のノボリを立てるために

はじめてお目にかかる太田昌孝さんは、傘寿(さんじゅ・80歳)を迎えられるようには見えない、覇気を感じます。「第5回中遠地区茶園共進会・成木の部」(1980年)の優秀賞受賞を皮切りに、太田さんの作るお茶は数々の品評会で毎年高い評価を得てこられました。

はやし
品評会では必ず1番をとる、という自負があると伺いました。
昌孝さん
子供の頃から天竜は銘茶の産地だと聞かされて育った。しかし、天竜から東京までの道中に春野、森町や本山ののぼりはあったのに、天竜茶のぼりがなかった。だから、品評会で1番をとり続けることで天竜のノボリを立てようと決めた。

それからお酒も煙草も断ち、全力でお茶作りに取り組んでこられました。

はやし
美味しいお茶を作る秘訣はどんなところにあるのでしょうか。
昌孝さん
まずは、畑。百姓は畑へお金をかけること。それから、努力を惜しんではいけない。(品評会で)2点の差を得るのに2点の努力では足りない。畑に1回でも多く行った人が勝つ。

いつも畑か工場にいらっしゃるという昌孝さん。文字通り、人生のすべてをかけ、情熱をもってお茶を作ってこられました。その努力の結果、太田さんの作るお茶は「天皇杯・農林水産大臣賞」受賞、「国際名茶品評会・世界名茶大賞」受賞、「北海道洞爺湖サミット首脳呈茶」「2015ミラノ万博出展」などの輝かしい功績を重ね、それらの功績に対して黄綬褒章を受勲されました。まさに静岡茶業界の重鎮であり、今なお牽引する存在です。

所狭しと並ぶ受賞の盾やトロフィーの数々

 

娘婿の勝則さんも孫の美咲さんもお茶の名人

カネタ太田園さんは昌孝さんの娘婿・勝則さんと孫の美咲さんの三代でお茶作りに取り組んでいます。勝則さんに茶畑に案内していただきました。

品評会に出品する最高級の茶葉を育てる茶園

勝則さんも義父の昌孝さんと競い合い数々の受賞歴を誇る、お茶づくりの名人です。

はやし
仕事に厳しい名人の下では修業も大変だったのでは。
勝則さん
疑問を持たずに7~8年かかって一人前になったんじゃないかな。

勝則さんの大らかな笑顔の中に、たくさんのご苦労、家族への思い、お茶への愛を感じました。

1年に1度の茶摘みのために、夏の日も冬の日も茶畑に通い育てた茶。摘み取られるのはやわらかくうま味ののった先端の部分だけ。勝則さんの手のひらで宝石のように輝いていました。

品評会に出品する茶の新芽はやわらかくうま味ののった先端の部分だけだ

この夏に開催された全国茶品評会において、太田三世代で1位から3位を独占し、話題になりました。

第73回全国茶品評会(日本茶の栽培・製茶技術の品評会)では2年連続で大臣賞を手にした昌孝さん(79)は、自身の受賞よりも初の家族での上位三賞独占を喜んだ。 2年前は娘婿の勝則さん(56)が大臣賞を受賞。今年は孫の美咲さん(31)が3席の日本茶業中央会長賞を受け、家族で腕を競い合っている。2019年8月31日静岡新聞

 

日本一の茶葉で作った33万円のボトルティ

アルコールが苦手な方や、運転や仕事のために高級茶で作ったボトルティの需要が増えています。太田昌孝さんの、品評会で日本一に輝いた茶葉で作ったボトルティ『キング オブ グリーン マーサ スーパー プレミアム』は、お値段、なんと、33万円。簡単には手が出ないお値段ですが、日に夜に畑に通い丹念に育てた、名人の人生の結晶ともいえるお茶。とっておきのお祝いの日に味わってみたいです。

King of Green MASA Super premium専用桐箱入り Series4, Vol.3 キング オブ グリーン マーサ スーパー プレミアム
専用桐箱入り 330,000円(税込)

第72回全国茶品評会「普通煎茶(手摘み煎茶)の部(4kg)」農林水産大臣賞(1等1席)受賞茶
品 種:やぶきた
茶産地:太田昌孝名人の茶園[静岡県浜松市天竜区]
栽培法:自然仕立
摘 採:手摘み
製 茶:太田昌孝
1本/750mL 茶飲料 冷蔵 *縦置き保管
*賞味期限:出荷日より1ヶ月

香り
旨味
渋味
水色
コク

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なにより嬉しいのは、親子3代でお茶を作れること

さいごに、質問をしてみました。

はやし
太田さんにとってお茶とは何ですか。
昌孝さん
お茶は我が子同然。人は裏切ったりするけど、お茶は絶対に裏切らない。お茶は手をかけた分だけちゃんと返してくれる。お茶をやっていたから普通では出会えない人にも出会えた。それ以上に嬉しいのは、親子三代でお茶の仕事ができることだ

娘の昌美さんは昌孝さんの姿をずっとみてきました。

昌美さん
冬のある日、お茶の木に積もった雪を「かわいそうに、かわいそうに」といいながら、手で払っている姿は本当に子どもに接しているようでした。私たちも見ているだけじゃだめだって、はっとさせられました。

そして、孫の美咲さんにもちゃんと伝わっているようです。

美咲さん
生産は尊い仕事。祖父や両親がお茶に向き合う姿を見てそう思います。

太田昌孝さんというひとりの茶農家さんの情熱が、天竜茶を高級ブランドにし、その技術と情熱が次の世代へと受け継がれ、天竜茶の歴史や文化が連綿と続いていくという事実に圧倒されました。

浜松駅へ戻るレンタカーのハンドルを握りながら、「食べ物を作る百姓をもっと大事にしてほしい」という昌孝さんの言葉を思い出していました。こんなにも情熱を注いで作られているお茶があることを1人でも多くの方お伝え出来たら。

今日も茶畑で過ごす生産者さんに思いを馳せながらお茶をいただきます。

 

カネタ太田園
[住所]静岡県浜松市天竜区西藤平36-1
[TEL]053-928-0007 [FAX]053-928-0050
[営業時間]平日 9:00~19:00 / 土日祝日 9:00~18:00(TEL受付 7:00~20:00)
[定休日]不定休

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林夏子(はやし なつこ)

林夏子(はやし なつこ)

岐阜山間部で祖父の営む富有柿畑に囲まれて育ちました。WEB制作会社を経て、2014年よりWEBライターとして活動。静岡県茶業会議所2017年度静岡ティーリポーター。日本茶の味わい、歴史、品種、かかわる人々の人柄に魅せられるファンの一人です。「はてしないお茶物語」は「Shizuoka Greentea Guide」にて連載中。

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