お茶旅 天竜 静岡

vol.16  奥天竜・水窪 農家民宿とぐり茶

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奥天竜、水窪茶の産地へ

龍山茶についてはこちらの記事をチェック


vol.15  息を呑む絶景! 瀬尻の段々茶園

浜松駅でレンタカーを借りて出発。天竜川を北上し、龍山(たつやま)を目指します。かつて今川氏の居城のあった二俣城址のある天竜区二俣を過ぎたころから山道に変わり、両側に山並みが迫ります。天竜川に沿ってさら ...

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龍山を出て、さらに天竜川上流の水窪(みさくぼ)に向かいます。

水窪町は2005年7月に佐久間町、春野町、龍山村など周辺の町村と共に浜松市へ編入しました。2018年10月の時点で水窪町の人口は2,062人。65歳以上の方が人口の6割を超える集落です。

※浜松市統計資料 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gyousei/library/1_jinkou-setai/007_nenreibetsu.html

天竜川の支流、水窪川に並行して走る国道152号、秋葉街道とも塩の道とも呼ばれる古い街道を通ります。車窓を楽しみたいのですが、曲りくねった山道なので運転に集中します。しばらくすると、道路の両脇に商店が並ぶ街並みに出会います。ここは秋葉街道の宿場町のひとつ、水窪の集落。かつては水窪は遠州灘の相良(静岡県牧之原市)から塩尻(長野県塩尻市)まで続く塩の道の中継地として栄え、旅館や商店で賑わったそうです。

傾斜の厳しい水窪の山並み

傾斜の厳しい水窪の山並み

 

天空の宿・農家民宿ほつむら

水窪の市街地からさらに細くなった山道を走ること1時間弱、農家民宿ほつむらさんに到着しました。いつのまにか携帯も通じなくなっています。

農家民宿 ほつむら

農家民宿 ほつむら

はやし
こんばんは!
いらっしゃい
ほつむら 藤谷さん
藤谷さん

笑顔で迎えてくださったのは、ここで民宿を開いて6年目(2019年4月現在)になる藤谷さん。

築150年の古民家

築150年の古民家

『ほつむら』は藤谷さん自らが築150年の古民家を改装し、1日1組限定の民宿を運営されています。囲炉裏の部屋の奥にはカラオケのマイクまで完備、奥の座敷では10名まで宿泊できる設えとなっています。料理をお願いすることもできますが、基本的には自炊です。民宿というよりコンドミニアムに近いです。

「何事も体験、セルフサービスでお願いします」という張り紙にあるように、キッチンや囲炉裏もご自由に、とのこと。ですが要領を得ないため、囲炉裏の火は藤谷さんが起こしてくださいました。

何事も体験、セルフサービスが基本だが、囲炉裏の火は藤谷さんに起こしてもらった

何事も体験、セルフサービスが基本だが、囲炉裏の火は藤谷さんに起こしてもらった

 

昼間に龍山の段々茶園で摘んだ生茶葉とます子さんが持たせてくださった夏ミカンでお茶のシーザーサラダとお茶のしゃぶしゃぶを作りました。

また、屋外には映画やテレビの中でしか見たことのなかったかまどがあり、実際にこのかまどを使ってご飯を炊くこともできます。(炊飯器の用意もあります)バーベキューのできるスペースもあり、自炊が『ほつむら』の重要なアクティビティとなっています。藤谷さんの家にはヤギやニワトリも暮らしているので小さなお子様もきっとお喜びになるのでは。携帯が鳴ることもない山奥で、本物の里山体験が楽しめます。

 

役目を終えた製茶工場でいつか星を観たい

『ほつむら』のある水窪の大沢地区は、急峻な斜面に焼き畑を拓き、雑穀や芋、こんにゃく、野菜などの作物を栽培してきました。地域で耕作する作物は時代のニーズとともに移り変わってきました。

昭和の初めごろには和紙の原料となる楮や三椏の栽培のほか、養蚕、炭火焼などで生活を賄っていたそうです。養蚕が振るわなくなると、茶の栽培が中心となりました。杉山彦三郎によって発明されたヤブキタ品種が1955年(昭和30年)に静岡県の奨励品種に指定されたころから斜面にはヤブキタが植えられはじめ、大茶園となっていったようです。

それから半世紀以上のときが流れ、時代は移り変わりました。『ほつむら』の裏には栽培を辞めた茶園とその横に使われなくなった製茶工場がありました。

ほつむらの裏山

ほつむら 藤谷さん
藤谷さん
2年前にやめちゃったけね

数年前、所有者が高齢のため、栽培を続けることが出来なくなり、製茶工場も茶畑と共に役目を終えたそうです。

ほつむら 藤谷さん
藤谷さん
まだ計画段階ですけど、製茶工場の屋根を改築して、星を観られるようににできたらと思っているんです

秋から冬にかけては夜空の星がひときわ輝くのだそうです。つぎは満天の星空を観にお邪魔しますね。

農家民宿 ~時忘れの家~ ほつむら
静岡県浜松市天竜区水窪町奥領家6140
TEL:053-987-3802

水窪のぐり茶

水窪町一帯は古成層とよばれる古い時代の土。山間地ならではの昼夜の寒暖差が高い香りを、深い谷から立ち上る霧がうま味を生み、美味しいお茶ができます。

水窪・佐久間という地区で生まれ、茶業一筋でやってこられた茶農家の三代目、みさくぼアグリ倶楽部・袴田研司さんにお話を伺いました。この水窪には、大正末期ごろから輸出用緑茶として生産されてきた蒸し製玉緑茶があります。蒸し製玉緑茶は『ぐり茶』とも呼ばれます。ぐりぐりっと茶葉がカールしている形状からぐり茶と呼ばれるのだそうです。

まっすぐな普通煎茶は日本茶の特徴ですが、当時のソ連(現ロシア)への輸出を見込んで、ソ連で好まれていた中国茶に似たお茶を作るべく、精揉の工程を省き、わざと中国茶のようにカールした外観をもたせたのだそうです。まさにニーズに合わせた商品開発の賜物であり、お茶を愛した先人たちの知恵や気概を感じます。

静岡県東部や伊豆地方へ旅行すると多くのぐり茶に出会うことがありますが、水窪のぐり茶は伊豆地方のぐり茶とは若干違いがあるそうです。標高約650mの茶園で摘んだ一番茶の若葉しか使用しないという袴田さんのぐり茶は天竜茶らしいきれいな山吹色。うま味、甘みが濃厚です。

ぐり茶 200g 1,000円(税別)

 

香り
旨味
渋味
水色
コク

 

 

\袴田さんのぐり茶はここで購入できます/

希少なお茶のため、在庫がないこともあります。
一度お電話でお問い合わせください。

みさくぼアグリ倶楽部
TEL: 053-987-0517

また、道の駅「塩の道 国盗り」 や 栃もち本舗 小松屋でも水窪茶の取り扱いがあります。


参考文献

二本松 康宏 (監修)(2015)『 水窪のむかしばなし 』 三弥井書店

 

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林夏子(はやし なつこ)

林夏子(はやし なつこ)

岐阜山間部で祖父の営む富有柿畑に囲まれて育ちました。WEB制作会社を経て、2014年よりWEBライターとして活動。静岡県茶業会議所2017年度静岡ティーリポーター。日本茶の味わい、歴史、品種、かかわる人々の人柄に魅せられるファンの一人です。「はてしないお茶物語」は「Shizuoka Greentea Guide」にて連載中。

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