お茶旅 庵原地区 静岡

vol.3 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園

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静岡県静岡市清水区の庵原(いはら)と呼ばれる地区に吉原といわれる地域があります。茶園から清水港と富士山が望め、気候条件がそろえば雲海に浮かぶ富士山が観られるという絶景の茶園です。数年前にはTOYOTAのアクアのCMで撮影された、写真家の間ではとても人気のある場所。その吉原で明治時代から100年以上茶業を行っていらっしゃる「マルジョウむらかみ園」の園主・村上博紀さんを訪ねました。

難易度高し!富士山の雲海

2回にわたり、絶景をカメラに納めようと取材を試みましたが…。

テイク1(2018/8/8 10:30am)

林夏子のはてしないお茶物語

当日は台風が近づいていて、今回は無理でした!

テイク2(2018/8/19 5:00am)

林夏子のはてしないお茶物語

今度は早朝に出向きましたが、やはり雲が…。

富士山の姿は雲にすっぽりと覆われていました。さらに、雲海は放射冷却などの自然条件が整わないと現れないため、そう簡単には観られないようです。残念!それでは、村上さんが撮影してくださった富士山にかかる雲海の絶景動画をご覧ください!

+ クリックすると動画が表示されます

注意ポイント

絶景スポットの周辺には大切なお茶を育てている茶園があります。撮影や鑑賞のために茶園に無断で立ち入るなどの行為は絶対にNGです。マナーを守って鑑賞しましましょう。

 

吉原とマルジョウむらかみ園の歴史

100年前の清水港の活況

林夏子のはてしないお茶物語

「大海」と呼ばれる大きな茶袋が荷積みされる様子。文字通り清水港から大海原を渡っていった

 

今から100年以上前の1906(明治39)年、マルジョウむらかみ園さんのある吉原からほど近い清水港でお茶の直輸出が開始されました。清水港はその4年後には横浜港を抜いて全国のお茶輸出量の80%を占めるまでに拡大したそうです。茶町周辺の製茶問屋街から清水港へのお茶の輸送量が増え、荷車では追いつかなくなり、軽便鉄道(現在の静岡鉄道)が整備されたりと、静岡の街はお茶とともに繁栄してきました。

 

村上家の歴史

マルジョウむらかみ園さんの茶業の創業もちょうどその頃。明治時代に村上善三さんが製材業の傍らで茶業を始められたそうです。

村上さん
実は林さんに聞かれて、うちの歴史を調べていたら、いろいろなものが出てきました!曾祖父の手紙とか日記がたくさん出てきたんです

はやし
おじいちゃんの青春の記録だったら、読んでいいのでしょうか

村上さん
いや、そうじゃなくて、お茶の取引の内容とかを書いたものです

林夏子のはてしないお茶物語

林夏子のはてしないお茶物語

林夏子のはてしないお茶物語

手書きの契約書や帳簿、製材業の時使用した法被に至るまで倉庫や鍵付きのタンスに大切に保管されていたそうです。当時の取引がいかに活発だったかがうかがえます。

 

マルジョウむらかみ園の家系図

村上 鯛次郎さん(生年月日不詳)

村上善三さん(明治7年生)

村上森太郎さん(明治30年生)

村上冷二さん(大正11年生)

村上公男さん(昭和26年生)

村上博紀さん(昭和55年生)

村上家の茶業の功労者として際立っているのが2代目園主の森太郎さんです。波乱万丈なお茶人生を送られたようです。

森太郎さんが家業を継いで間もない26歳の時、1923年(大正12年)9月1日に関東大震災が起こり、その復興のために材木に多くの需要があり大量の木材を横浜へ出荷したものの詐欺に遭ったそうです。今でいう「億単位」の負債を抱えたとか。巨額の借金の返済のため、一時は所有資産を全て処分することも考えたそうですが、森太郎さんは踏ん張ります。製材業を辞め、製茶業に一本に絞り、借金は数年で完済したといいます。

昭和に入って戦争が始まり、嗜好品であるお茶の生産は後回しにされたり、空襲が頻繁になったことで茶業ができない時代もありました。そんな中でも森太郎さんはみかんの倉庫となった茶工場の片隅で、茶の手揉みを続けていたそうです。平和な時代が訪れ、再び茶業を行えるようになってから森太郎さんは地元のコンテストで毎年入賞し、手揉みの名人として知られていたそう。今も村上家には森太郎さんの受賞した昭和24年全国製茶品評会・煎茶部門で3位の賞状が大切に保管されていました。

林夏子のはてしないお茶物語

現在も残る森太郎さんの賞状

森太郎さんは繁忙期になると工場で寝るほどのお茶好きだったといいます。その森太郎さんのお茶づくりにかける思いと情熱は、直接、森太郎さんから茶づくりの指導を受けた公男さんと、公男さんから指導を受けた博紀さんによって脈々と伝えられています。

樹齢100年の在来種の茶園

林夏子のはてしないお茶物語

林夏子のはてしないお茶物語

むらかみ園の歴史を物語る樹齢100年のお茶の木があるそうなので、見せていただきました!これは「在来種」といって、日本人が長い間味わってきたお茶の品種です。近年では生産性の高いヤブキタなどの「改良種」がほとんどの茶園を占めており、現在在来種の茶園はわずかに3パーセント程度と希少な品種なのだそうです。挿し木ではなく種から育てるため、地中深くに根を張り、生命力が非常に強く樹齢が長いのだといいます。その昔には森太郎さんが摘んだ茶の芽を、長い時を経て、今博紀さんが摘んでいます。摘まれても摘まれてもまた再生する、その生命力にただ圧倒されます。

こちらで購入できます!独特の香り、渋さの中に、旨みを感じていただける野性味ある緑茶。無農薬、有機栽培で育てられています。

香り
旨味
渋味
水色
コク

 

博紀さんの紅茶づくり

紅茶づくりはゼロから

林夏子のはてしないお茶物語

現園主・村上博紀さん

現園主の博紀さんは東京農業大学で農業を学び、フードサービス業で修業後、2006年に家業を継がれました。先代から受け継ぐ伝統に基づいて煎茶を作る傍らで、「べにふうき」という紅茶に向く品種で紅茶づくりに挑戦します。煎茶はお父様である公男さんから教わることができましたが、紅茶づくりは何のノウハウもありませんでした。そこで、博紀さんは丸子紅茶の師匠について勉強し、何度も何度も試作を繰り返しました。はじめは茶色いだけで、紅茶とはかけ離れたものが出来たそうです。試行錯誤の末、やっと納得のできるものが出来たため初めて出品した品評会で銀賞を受賞。紅茶を作り始めて8年目のことでした。自分が考えているものが狙った通り上手く作れ、それが認めてもらえたという経験は博紀さんにお茶づくりの醍醐味を教えてくれました。それからますます紅茶づくりにのめりこみ、博紀さんの作った紅茶が毎年品評会で受賞するようになり、2017年日本茶アワードで審査員奨励賞を受賞しました。

林夏子のはてしないお茶物語

左から在来種・紅茶・蜜香紅茶を水出しでいただきました

林夏子のはてしないお茶物語

蜜香紅茶は日本茶アワード2017で審査員奨励賞を受賞

日本茶アワード審査員のコメント

一番の特徴は、マスカットを連想させるフルーティな香りです。その余韻は飲んだ後の後味にも残ります。渋みが少なく、ほんのりとした甘みが口に残る優しい味は、外国産紅茶には無い特徴でしょう。当然、砂糖やミルクを入れず楽しめる紅茶です。…本製品は今後の国産紅茶が目指すべき代表的な品質を備えているものと思います

この紅茶を水出しで実際にいただきました。鼻に抜ける上品な香りで、渋みをほとんど感じません。ストレートで十分甘く、美味しいです。博紀さんの優しい人柄が紅茶の味に出ているなぁと感じました。

日本茶アワード審査員奨励賞の紅茶はこちらで購入できます!

香り
旨味
渋味
水色
コク

村上さんのプロフィールを公開しますっ!

はやし
ところで村上さんは独身でいらっしゃいますか?

村上さん
はい。彼女ができてもお茶時期に忙しくて連絡できないと上手くいかなくなっちゃって…女性はマメに連絡しないとダメみたいですね

はやし
なるほど…。茶畑にいたら出会いも少ないですよね。読者の方向けに「公開彼女募集」しちゃいましょう!

というわけで。プロフィールを公開しますっ!

村上博紀さんのプロフィール

♥身長165㎝  ♥乙女座 ♥結婚歴なし ♥休日は雨の日 ♥趣味はカメラと将棋と料理とBBQとランニング ♥性格は好きな事にはこだわるのですがそれ以外は大雑把なので、O型っぽいと言われますが B型です

はやし
好きなタイプはありますか?

村上さん
うーん、優しい感じの人が 良いですかねー

はやし
私はお茶の時期に連絡できなくても大丈夫なタイプが良いかと思いますっ

【住所】静岡県静岡市清水区吉原1050
【TEL・FAX】(054)368-1119
【営業日】平日10時〜17時半
【休業日】土曜、日曜日、祝日
【WEB】マルジョウむらかみ園

直接店頭販売も行っています。ぜひお立ち寄りください。

林夏子のはてしないお茶物語

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林夏子(はやし なつこ)

林夏子(はやし なつこ)

岐阜山間部で祖父の営む富有柿畑に囲まれて育ちました。WEB制作会社を経て、2014年よりWEBライターとして活動。静岡県茶業会議所2017年度静岡ティーリポーター。日本茶の味わい、歴史、品種、かかわる人々の人柄に魅せられるファンの一人です。「はてしないお茶物語」は「Shizuoka Greentea Guide」にて連載中。

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